Dr. Isao Takahashi Takahashi Research Office of Freshwater Biology http://hito-ayu.net 高知県河川委員会委員、奈半利川水系ダム検討会委員、他。1957年9月:高知県生まれ 1980年3月:長崎大学水産学部卒業 1981年9月:(株)西日本科学技術研究所入社 2003年4月:「たかはし河川生物調査事務所」設立 2003年5月:東京大学から農学博士号取得

 私は地元・高知の四万十川でアユの調査・研究を15年ほど続ける中で、アユが激減していく状況を目の当たりにしました。その結果、アユや川を守るためには調査だけではなく、対策の立案とそれを実現するための技術開発が重要であると考えて今日に至っています。個人的には今よりも人々の暮らしを自然と調和させて行く方向に向かわないと、川の環境は悪化するばかりだと思います。

 天竜川では2006年からアユの調査を行っていますが、諏訪湖を源流とする急峻な地形、そしてダムの数で全国でも例のない特殊な河川と言えます。また、水深のある場所でアユが産卵する点でも独特なものがあります。現状では水の”にごり”が最大の問題(魚へのストレスと、石に堆積することで珪藻類の繁殖を阻害するため)になっていますので、これを解消するための原因究明や方策の立案が急がれています。

 しかし、これまでの調査では、一概に水のにごりだけがアユの減少理由であるとは言い難い部分もありますし、ダムの放流だけがにごりの原因かと言うとそれだけではないので状況は複雑であり、それも天竜川の特殊性のひとつです。何しろ20年ほど前には釣り雑誌に紹介されるほど天竜川にはアユがいた川なのですから、近年の減少傾向の原因をさらに究明していく必要があるでしょう。

たかはし河川生物調査事務所
高橋勇夫