電源開発(株)茅ヶ崎研究所実験設備見学(2013.8.20)

■研究所の敷地に1/50の船明ダムを精密に再現!

正式名を『船明ダム三次元水理模型』というこの模型では、ダムと河川の関係性を1/50のスケールで緻密に再現。全長65m(実物の船明ダムを中心とした上下約3.2km範囲に相当)、通水する水の最大流量は約0.63㎥/秒(実物は11,130㎥/秒)、流路は砂を整形して実物の河床地形を再現するなど他に類を見ない規模の模型となっており、これによってダム放流による河床への影響などを高精度にシミュレートするものである。

この模型による実験は8月以降、年内いっぱい続けられる。夏から秋にかけての時期は、ダム放流で発生する水流がどのように河床を洗掘(掘り起こして流す事)するかを確認し、当該地点へのテトラポット投入などによる応急対策の安定性や成果を確認。その後、長期的対策としての『河床維持』と『河床復元』に関する方法案を確認する予定だ。『河床維持』では現状の河床においての対策工事、『河床復元』では洗掘された河床の復元(埋め戻し)と護床工の施工といった内容になっており、河川再生へ向けた方策を練り上げていく。

■研究棟の中では堆砂排出、洪水対策などの実験が進められていた

屋内の研究練では水理を中心とし、材料、耐震など多くの実験が行われいる。その中でも今回とくに注目されたのは『堆砂排出』の模型実験である。堆砂とはダム湖の湖底に流入した土砂が堆積したもので、その排出は河川の環境保全における大きな課題のひとつである。実験されていたのは『鉛直二重管』という方法で、同軸で二重にレイアウトされた二本のパイプを設置し、“サイホンの原理”によって堆砂を吸引・排出するもの。設備が小規模で、ダム水位と排出地点の水位差を利用するため作動に動力を必要としない事から、実用化が期待される。また、福島県にある滝ダムの模型実験では、集中豪雨における急激な水量増加とダム放流量、および下流河川における流下状況の関係性を確認し、洪水被害をどのように抑制するかという研究が行われていた。

■研究所ではダムと発電に関する地道な研究や訓練が行われている

日本国内で多くのダムを管理すると同時に、さまざまな発電所も管理する電源開発では、それらに関連・付随するさまざまな実験・研究および運用訓練を行っている。今回はとくに天然資源再生連絡会と関わりの深い、ダムと水力発電に関する分野の設備を見学した。

●ダムコントロールシミュレーター

ダム放流のコントロール要員を育成するのための訓練装置で、実際にダムの管理・運用で使われているものを使用している。表示モニターにはそのダムの貯水位・流入量・発電量・降水量、さらには同じ水系にあるダムの情報などがリアルタイムで表示され、それに応じてコントロールパネルでダムの放流量を制御する。

●コンクリート構造物評価実験

ダムに使用されるコンクリート構造物の研究。とくに強大な水圧を支えるための構造材料としてコンクリートには長期的な『圧縮強度』が問われるため、特定の条件下に材料片を長期間保存しその経年変化を確認するなど、さまざまな角度から材料研究が行われている。

●ステンレス鋼劣化評価実験

水力発電で使われる発電用水車の強度を確かめる事によって、耐用年数やメンテナンス時期を確認するための実験。主に部品交換や廃棄されて不用になった材料を使い、寿命診断や強度を上げるために施す表面加工の効果測定を行っている。

●国内有数の水中振動台

新耐震基準に沿った耐震設計や、高度化する構造技術に対応するための実験装置。阪神淡路大震災の818ガルを上回る980ガルまでの揺れを実現できる。水中振動台は、国内でもここ以外では3ヵ所しかなく、主にダムや港湾構造物を対象に実験を行っている。