高圧の水流で河床をきれいにする――そんな試みが以前から天竜川で行われていることをご存知でしょうか?アユの餌となる珪藻や藍藻の、より良好な繁殖を実現するための取り組みのひとつであり、その可能性に期待が集まっています。
川に浮かべた小さなボートにポンプを積み、水圧で河床の石の表面に付着しているアユのエサになる藻類の成育を妨げる藻類をはがしていきます。
川に遡上した後のアユは石の表面に付くコケ(珪藻類や藍藻類)を主食としますが、天竜川で問題となっている恒常的な濁りの原因である泥(シルト・粘土)や、日当りの良い場所で発生しやすい緑藻類が、河床の石を覆っている事がままあります。
このため、石の表面にエサとなるコケが繁殖しにくい、あるいはコケが泥に覆われているためアユが効率的に栄養を摂取できず、その成長に悪影響を及ぼしているのが現状です。
そこで、天竜川漁協ではアユの生育環境を少しでも改善するために、河床の泥や枯れた緑藻を洗い落とす“河床洗浄”を実験的に実施しており、より効率的な方法や装置の検討を続けています。
今回の作業内容は写真にもあるように、ポンプによって水を吹き付ける高圧洗浄です。いまだ人力に頼るところが大きい原始的な手段ですが明確な洗浄効果があり、近い将来、より広範囲に効率的な洗浄を行うための洗浄装置の開発等を念頭に置いた試みとなっています。
当日は、付着藻類の専門家である村上教授が実験の様子を視察すると同時に、その効果の程を測定・分析するために洗浄前後の石のサンプルを採取。今後どのような結果が出るか、関係者の期待が集まります。
この河床洗浄の実施により、多少なりともその下流域に濁りが出てしまうことも懸念されますが、天竜川における水産資源の全体的な動向を考えると、このような作業は重要な意義を持つと再生連絡会では考えています。