「砂州」とは、流水と土砂によって自然に形成される地形です。天竜川では、船明ダムから河口にかけておよそ20個の砂州が確認されています。これらの砂州は、上流のダム群から流出する濁り成分を濾過する働きや、ワンドや側流などに好適な湧水環境をつくり出す働きをしていると考えられています。今回は、濾過機能や湧水機能の高い砂州の地形条件を明らかにするため、川を下りながら水質調査や湧水環境調査を行いました。
今回の調査は、船明ダム下から河口までの約30kmの間で行われました。気温15℃、曇り時々晴れ(8日は14℃曇り時々雨)。また、調査ポイントへのアクセスが天竜川の河原からでは難しい箇所が多数あるため、天竜川漁協の協力で船を出していただきました。通常より水量が少なかったため船底が河床に接するなど、船の運航が困難な地点もありましたが18ケ所の砂州の調査、27地点での採水ができました。詳しい調査報告は、後日、レポートします。
中部大学応用生物学部環境学科村上教授率いる村上チームは、濁度測定器を用いて船明ダム下流地点から東海道本線鉄橋下までの間、船が下流に下っていく行程で、1分おきの濁度の変化を測定しました。
船明ダム直下の塩見渡橋付近では、15度程であった濁度は、最下流の天竜川橋ではその2/3の10度まで徐々に低下しました。これは、流れが緩やかになるに従い、河床に濁りが沈殿してくるためです。沈殿した濁りは礫を覆い、アユの餌である付着藻類の成長を阻害する可能性があるのです。下に速報値を掲載します。
京都大学防災研究所水資源環境研究センターの竹門康弘准教授が率いるチームは、船上からは18ヶ所の砂州ポイントの上端、下端で採水を行った他、多項目水質プロファイラー測定器によって、水温・塩分・DO・クロロフィル・濁度の鉛直測定を行い、各種水質メーターを用いて、表層水の水温・DO・濁度・pH・電気伝導度・酸化還元電位の計測を行いました。また、地上では、ドローンによる産卵床を造成するのに適していると確認されている砂州の地形調査、その砂州を通過する湧水の入り口、出口の水温、水質、水深、流速、河床軟度、河床材料等の調査を行ない、データを採取しました。