二俣川で二ホンウナギのモニタリング

2014年に絶滅危惧種に認定された二ホンウナギ。今年9月、天竜川漁協は水産庁の強力により、浜松市天竜区二俣を流れる天竜川の支流である二俣川で、二ホンウナギの生息場所となる『石倉カゴ』の設置とモニタリング調査を始めました。(石倉カゴをほどくスタッフ。後ろは天竜浜名湖線の二俣川橋梁。)

■石倉カゴとは……

川の中に石を積み、その中に隠れたウナギを獲る伝統的漁法『石倉漁』。カゴに礫(砕石)を詰め、河川の護岸などに利用する伝統的土木工法『蛇カゴ』。この2つのエッセンスを取り入れて九州大学、鹿島建設(株)、(株)フタバコーケンが共同開発したのが高耐久性樹脂製の『石倉カゴ』です。このカゴの中ではウナギだけでなく、エサとなるエビや、カニ、ハゼなどのさまざまな生物が棲みつき、多様な水棲生物の世界が形成されます。

■水産庁のウナギ生息環境改善支援事業

水産庁では、平成28年度よりウナギ供給安定化事業の一環として、統一した規格の「石倉カゴ」を用いた『ウナギ生息環境改善支援事業』を展開しています。今年、平成29年度はその実施対象河川に天竜川の支流『二俣川』が選出され、9月24日に鹿島建設(株)、(株)フタバコーケン、天竜川漁協によって石倉カゴが10基敷設されました。

■カゴ内の生物を採取する —— 水中から石倉カゴを引き揚げる

石倉カゴは二俣川右岸側のコンクリート護岸に覆われている水棲生物が棲みにくい場所に縦に並べて設置されました。モニタリングではその中の3基のカゴを解体しました。

鹿島建設(株)の柵瀬信夫農学博士指導の元、石倉カゴの外囲網を立ち上げ、カゴの中の礫(砕石)を取ってカゴを取り外し、カゴ内に生息している生物を外囲網にすくい上げました。(写真右列4段目)一番下流の石倉カゴからは手長エビなどのエビ類やハゼ類、モクズガニ、ナマズが、2番目の石倉カゴからはエビ類やカニ、ハゼなどに混じって体長63cmのウナギが、下流から3番目の石倉カゴからはザリガニなどが採取されました。

今回捕獲したウナギは計測後、識別用マイクロチップを埋め込み継続調査のために放流。それ以外の水棲生物は水産庁の統計を取るためにそれぞれの種類ごとに分類され、九州大学大学院農学部研究員資源生物化学部門水産増殖学分野の望岡典隆准教授・農学博士に送られました。また、今回のモニタリングのために解体された石倉カゴ3基は再び設置され、継続してモニタリング調査が行われます。