アユの分布調査2016  6月14日から15日、高橋勇夫博士と天竜川漁協によるアユの分布調査が行われました。これは河床に残されたアユのハミ跡を調べてアユの分布傾向や生息量を把握するものです。今回は秋葉ダム下流から掛塚橋上流右岸までの8ヶ所箇所で実施しました。

たかはし河川生物
調査事務所
高橋勇夫博士

1957年高知県出身。「たかはし河川生物調査事務所」を主宰し、全国各地の河川で天然アユを増やす活動と情報発信に取り組んでいる。

調査の趣旨
アユ資源を保全するためには、資源量(生息数)の把握が欠かせない。天竜川のように濁りのある河川では、直接観察による計数は難しいもののアユ生息の痕跡とも言えるハミ跡(河床の石に付いた摂餌跡)は多少濁りがあっても観察が可能である。そこで、その被度(石の表面についたハミ跡の面積率)を計測すれば、定性的にはアユの量を把握できる。また、ハミ跡の多さによってアユの分布傾向を知ることもでき、経時的な変化を追えば、アユの移動や生息量の変化(どの時期にアユが減るのか?)も把握することができる。

1.秋葉ダム下流

ダムの直下ではアユが釣れている事を確認したが、調査した地点付近ではハミ跡はごく少数だった。

3.雲名橋上流

ハミ跡はほとんど見つからず、広い範囲で糸状緑藻(繁殖力が旺盛でアユの餌となる珪藻類の生育を阻害する)の繁茂を確認。 雲名橋の上からアユの魚影が確認された。

5.飛竜大橋上流

置き土実験区。河床には泥の堆積が目立っており、ハミ跡は少なかった。糸状緑藻の繁茂も見られた。

6.磐田グランド下流左岸

ハミ跡はほとんどなかった。水深70cm以上の水深ではコケ(付着藻類)がほとんど生育していなかった。

7.旧国道1号線下流左岸

塩見渡橋下流に次いでハミ跡の被度が高かったが、水深30cmよりも浅い部分に限定されていた。同時に小型な魚体のハミ跡が目立った。

4.塩見渡橋下流

今回の調査地点の中では被度17%とハミ跡が最も多く、とくに水際近くにその分布が多く確認できた。
今回の結果と考察
ハミ跡の被度は1~17%と著しく低かった。残念ながら、この数値は同様の調査を開始した2013年以降で最低である。この原因としては、(1)アユの生息量がかなり少ない、(2)何らかの理由であまり摂餌していない、という2つのことが考えられるが、現段階では、(1)の可能性が高いと考えられるものの、まだ明確ではない。今秋まで継続的に調査を続けることで、その実態を明らかにしたい。