平成30年2月28日(水)13:30~16:30
天竜川漁業協同組合2階会議室
たかはし河川生物調査事務所
:高橋勇夫農学博士
中部大学 :村上哲生教授
京都大学 :竹門康弘准教授、高橋真司
天竜川漁協 :平野國行組合長、鈴木業務委員長、中谷総務委員長、
松下総務副委員長、谷髙事務局長
国土交通省浜松河川国道事務所調査第一課
:林課長
静岡県経済産業部水産資源局水産資源課資源増殖班
:吉川資源増殖班長
電源開発(株)
茅ヶ崎研究所:喜多村雄一専任部長
中部支店 :
佐久間電力所(天竜土木G):中川(武)所長補佐、小泉M
用地G :津田副支店長、畠GL、服部GM、高橋(記)
(株)JPビジネスサービス社会環境部環境防災システムG
:小林GL
竹門:産卵場ごとの環境の違いが、卵黄指数の異なる個体が確認される原因ということだったが、現時点ではどういった原因が考えられるか。
高橋:他の河川での調査結果も踏まえると、河床の泥分の多さが関係しているように思うが、それが具体的にどう作用しているのかがわかっていない。あるいは流れの違いが関係しているのかもしれないが、こちらも詳しいことはわかっていない。奈半利川ではふるいにかけた砂利を河床に投入しているが、卵黄指数の高い個体が多く確認されている。
竹門:砂泥分のような細かい粒径の河床材が多い環境だと、河床に卵が埋もれ、浮上しづらく、一方、目の粗い河床であれば浮上しやすいということであれば非常に理解がしやすいが。
高橋:必ずしもそうではないように思う。
竹門:考えられるもうひとつの原因として、ワンドになっている湧水箇所が主な産卵場の場合、孵化しても流れのない場所であるため、本川に入るまで時間がかかっている可能性があるのではないか。
高橋:去に140億尾ほどの流下が確認された際も同じように卵黄指数の低い個体が確認されている。140億尾もの仔魚稚魚がいた場合、主となる産卵場は本川であるだろうから、必ずしも湧水箇所での産卵が関係しているとは言い切れない。
竹門:ただ、釣りをしている人からは湧水箇所が産卵場になっていたという話を耳にしたため、関連があるように思う。
谷髙:そもそも孵化したての時点からの卵黄指数が異なっているという可能性はないのか。
高橋:卵黄指数3の個体に関してはその可能性もあるかもしれない。今後の調査で解明していきたい。
竹門:タイル実験において夏場と冬場で藻類量が一桁違うが、これはどれぐらい異なるのか。
村上:20倍ほど異なっており、この実験だけでは比較にならないかもしれない。
竹門:冬場における藻類量は特別多いというわけではないのか。
村上:天竜川の冬場は相対的に見てもかなり多い方である。一方、夏の藻類量はかなり少ない。
竹門:となると、実験の目的は、そもそも量の少ない藻類を除去することよりも、藻類の成長を妨げているシルト分を除去することに主眼を置いた方が良いのではないか。
村上:タイルをネットに入れたことによって、タイルへのシルト分付着が少なかったことでアユに適した藻類がよく育ったという可能性はある。ただ、これを解明する具体的な方法がまだない状態である。ネットの種類を変えるなどして今後調査を進めていきたい。
平野:洗浄作業を行っても、その後シルト分が付着するのを防がない限りは、アユの生息に適した餌環境の整備は難しいように感じる。増殖への効果が出るまで時間のかかる作業であるため、費用対効果も考えた上で取り組みを進めて頂きたい。
村上:今までは藻をはぎ取ることに注力してきたが、今後は重機による河床耕耘によって、河床の石をひっくり返して、新鮮な面を表にするといった方法を取っていきたい。
平野:天竜川は河川が大きいため、そういった効率の良い方法をお願いしたい。
村上:あと、JPで研究中の洗浄自動化の方も実現すれば面白い方法である。
平野:自動化はなかなか難しいかもしれないが…。
平野:水量を増すのは難しいのではないかと思うが。
竹門:砂州周辺の流量が工事前よりも増えていることは確認しており、対策を実施すれば、水量が増すのは確実だと考えている。
平野:本川の流量が増えない限りは水量も増えないように思うが。
竹門:下端部の流量が増えない原因は、伏流水が砂州の中へと流出していることにあると考えられるため、対策を考えていきたい。現在は産卵時期に比べ、水位も低く、湧水瀬への水量が増えることは期待しづらいが、産卵時期になり水位が上がれば、対策の効果は表れると考える。
村 上:アユの胃の内容物についてだが、研究の成果はすでに出ているか。
喜多村:DNAで調べており、すでに結果も出ており、データ提供も可能である。九州、十津川のアユと比較したところ、緑藻類を多く食べているという結果になり、意外なものであった。
竹 門:遺伝子調査と併せて、調査地点における付着藻類の種類ごとの割合は確認しているか。
喜多村:そこまでは行っていない。
竹 門:胃の内容物に緑藻類が多かった原因が、単純に緑藻類が多く生えている場所だったことによるものなのか、他の種類の藻もある中で緑藻類が好まれたのかをはっきりさせるためにも、種類ごとの割合は確認すべきだと感じる。
喜多村:河床洗浄作業を実施している地点周辺で行っており、そのあたりは珪藻類がほとんどのはずだが、緑藻類が多いという結果が出ている。
高 橋:藻類の種類によって消化されないものもあるのか。
喜多村:可能性はあり得る、胃の内容物自体を調べる方法もあるか。
高 橋:消化管の末端まで内容物を見れば調べることが可能である。
喜多村:承知した。今後、調査の対象・方法について工夫していきたい。
竹 門:置土に関して、粒径の選択はどのように行っているのか。
小 泉:シルト分のようなものは混ざっておらず、砂利がほとんどである。
竹 門:置土量の決定はどのように行ったのか。
小 泉:漁協と置土量を協議の上、各地点に量を割り振っている。
竹 門:全体の置土量33,400㎥という数値の根拠は何か。
喜多村:船明調整池の河床変動量が年間200,000㎥~300,000㎥ほどあり、それを基準に10%ほどの量から置土を始めるのが適正と判断した。また、年間の秋葉堆砂処理量を鑑みた上で、毎年の量を設定している。
中 川:土砂も天竜川における有効資源であるという考えのもと、量の決定を行っている。
竹 門:土砂も資源であることに変わりはないが、仮に10%から20%に量を増やした場合、河口閉塞が起き、結果的に土砂を取り除くことになる。ダム上流で採取した土砂だけでなく、ダム下流へと流れた土砂も資源として活用することができれば、河川内での土砂の循環が実現できる。こうした計画を長い目で考えることも必要に感じる。
林 :全体の土砂管理はこの先50年間を想定して全体量等の計算をしているが、河川に対する粒径ごとの必要量を割り出せてはおらず、今後研究を進める予定。置土の効果としては、川の力によって自然に分級された土砂が環境改善に寄与することを期待しているが、土砂を置く場所と採取する場所の選定が今後のテーマになると考えている。
竹 門:再生連絡会の役割としては、JPの置土、国交省の土砂管理によって河川環境がどのように変化したのかを評価していくことにある。平成29年度に実施した置土についても、モニタリングを実施すべきだと感じる。
平 野:JP、国交省、漁協の三者の置土への考えが合致した上で、漁協の求める河床低下の抑制、良好な漁場の創出、最終的には養浜事業への貢献などにもつながれば良い。いずれにせよ、環境のモニタリングは実施して頂きたい。
来年度以降の方針に関しては概ね同意を得ることができた
※次回から近自然河川研究所 有川氏の参加も決定
高橋:河川整備計画との関連性はないのか。
林 :別個のものである。総合土砂管理計画に基づいて事業を進めるには関係者が多すぎるため、事業者がそれぞれ事業を進める上での目標と考えて頂きたい。
平野:土砂管理目標(2)の中にはアユという言葉もあり、漁協の期待する部分が初めて反映されていて、非常に期待している。
竹門:原案ということだが、今後、改訂の予定はすでにあるのか。
林 :具体的な対策は佐久間ダムから下流において立てられているのみであり、今後はより上流部での対策、海岸領域での対策に関しても検討を進めていきたいと考えており、計画を見直していく予定である。
竹門:天竜川下流部における土砂管理では、ダムがポイントであることは間違いないが、気田川からの土砂流入も相当な量あるように感じる。そのあたりはどう考えているか。
林 :本計画の本文では気田川からの土砂流入が粒径ごとにどれくらいあるのかといったことも、評価可能な範囲で記載している。
竹門:そういった評価は県が担当しているのか。
林 :本川は県が担当しているが、支川に関しては評価を行っていない現状だが、将来的には実施していきたいという計画はある。
竹門:気田川から流れてくるシルト分が相当な量あるということが最近の調査でわかってきており、気田川の土砂管理は天竜川下流部にとって重要であると考えている、検討を進めて頂きたい。