アユの食性に触れておられたが、同一水域でアユの個体による餌選択性に差が見られるということなのでしょうか。アユの味について、餌としてではなく一緒に取り込んだ成分の差、あるいは餌そのものが環境により成分が異なるということではないのでしょうか。
実際に川の付着藻類の分布を調べてみますと、種類組成や付着量は、同じ水域でも、微地形の違いにより大きく異なっていますし、アユが餌を食っている場所と捕獲された場所が違っていることも考えなければなりません。しかし、問題が複雑になりすぎるため、当面、餌選択性は無く、アユの消化管内の藻類の組成は、生息場の付着藻類の植生を反映していると考えて、解析を進めています。
アユの味を決定する要因の一つが餌であることは間違いないことでしょうが、今まで、それだけが強調されすぎていたように思えます。異臭アユの事例のいくつかは、ご指摘のように、「一緒に取り込んだ成分」が引き起こしていると考えた方が説明しやすいように思えます。アユの官能試験 (味などの人の感覚による評価) では、餌となる藻類の種類よりも、その水域の汚染が、評価の差となって現れるようです。
(名古屋女子大学家政学部教授・村上哲生)