9月中旬から大きな台風に見舞われ、川の透明度がかなり落ちてきていますが、アユの成育に影響はあるのでしょうか? また、釣り人をあまり見かけません。あまり釣れないのでしょうか? その場合、アユはどうしているのですか? そろそろアユの産卵の時期だと思いますが、この濁りは産卵に影響するのでしょうか?
短期間の濁りはそれほど心配する必要はないのですが、天竜川のように濁りが長期に及ぶと餌となるコケ(付着藻類)の生育が悪くなるため、餌不足でアユは痩せてきます(場合によっては死に至ると考えられます)。このようなことが産卵期の秋に起きると、卵質にも悪影響が及ぶことも心配されます。また、産卵場となる瀬の小石の間にも泥が詰まって、アユの産卵を阻害してしまうこともあります。
最近の研究で、濁りがアユのストレス要因となり、アユの免疫機能が低下することが分かってきました。そのため、病気(特に冷水病)にかかりやすくなり、死亡する個体も多くなることが予想されます。
濁りがきつくなると、アユもなわばりを作らなくなるため、友釣りでは釣れなくなります。このような時、アユがどうしているのかは、濁りで観察することができないのではっきりしたことは分かりませんが、岸よりの浅い場所にハミアトがたくさん残されていることが多いので、光が届きやすい浅瀬で餌を食べているのではないでしょうか。(高橋勇夫)
(たかはし河川生物調査事務所代表・高橋勇夫)
アユは透明度の高いきれいな水況に生息する魚です。河川の石の表面に付いている苔をエサとし、櫛状の歯で削ぎ取り食べて(食んで)成長していきます。
河川が濁るとエサとなる苔が増加しません。濁りにより日光が遮られ、光合成が出来ないからです。また、石の上には無機物の泥が付着するため、アユが石の表面を食んでも成長に必要な有機物の吸収量は極めて低くなり、アユの成長が妨げられてしまいます。
影響はエサが食べられないということだけではありません。濁りはストレスにもなりますし、SS値(浮遊物質量)が非常に高かったり長時間濁水にさらされると、泥によりアユの鰓が目詰まりをおこし死に至ることもあり得ます。ですから、アユは伏流水のしみ出ている所や支流など濁りの少ない所へと避難しているようです。濁りの中での釣りは視認性が悪いことなども重なり、釣れない=釣り人がいない、のです。
産卵に与える影響としては、親アユが卵を産むために必要な栄養を得ることが出来ないので、抱卵数が少なくなったり、卵質が悪くなったりすることがあります。また、産み付ける際に粘着性の卵が流失したり、産み付けた卵の表面に泥が被って卵が窒息したりと、濁りはアユの生涯において負の要素しかありません。
(天竜川漁協・平野国行)