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 近年増水によりアユがいなくなってしまいますが、それは水質によるものか、アユの性質が変わったのか、どちらなのでしょうか。

 この現象は、天竜川では定量的には把握できていないのですが、同じようなことが全国的に起きていますので、天竜川で起きている可能性も高いと思います。原因は特定できていませんし、河川によって違うかもしれません。
 「近年になって」つまり「かつてはなかった現象」であることを考慮のうえ可能性を述べるとすると、冷水病と結びついた現象ではないかと思います。
 というのは、川が増水すると水温が急低下したり、濁りが発生したりします。このような変化はアユのストレスになるといわれていて、冷水病の発症を促すことになります。とくに冷水病菌の活性が高い16〜20℃の時に増水した場合や、水温が22-23℃まで上昇していて、急に16〜20℃に低下した場合には、冷水病を発症しやすくなります。冷水病を発症してもアユはすぐに死ぬわけではないのですが、体調不良から増水に流されやすくなります(流れに抵抗できなくなる)。ここから先はまったくの想像ですが、流されたアユは海にまで出て、そのまま帰ってこなくなるのではないかと思います。実際、河口に近い緩流部に潜ってみると、冷水病と思われる死にかけた個体を多数観察することがしばしばあります。

(たかはし河川生物調査事務所代表・高橋勇夫)
(たかはし河川生物調査事務所代表・高橋勇夫)

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