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 ディスカッションが、海に問題があるとしながら、川の問題に限られていたのは不満です。ダムによる土砂供給低下が海の環境を大きく変化させているはず。産卵期間は短くなっているが、早くなっているように見えます。海の水温上昇が成長を良くし産卵期が早まる、といっても資源量減少とどう結びつくか、アイデアはないものでしょうか。
 
 冷水病には遺伝子レベルで2種類あるはずです。アユがもつ抵抗性遺伝子にも2タイプあり、一方に強いと他方に弱いという関係にあると思います。天竜川の冷水病がどちらのタイプで生息するアユかどちらの遺伝型を持つかを知る必要があるのではないでしょうか。

1.海の問題

 天竜川では早生まれ(10月~11月前半)のアユが翌年の春になってもほとんど帰ってこない(遡上しない)という現象がしばしば観察されます。秋にふ化したアユの子を調べてみると、数が多いのは10月~11月前半生まれなのに、翌年の春、川に遡上してきたアユの誕生日を調べてみると、11月後半から12月生まれが大半で、11月前半以前にふ化した「早生まれ」のアユは少ないのです。同じような現象は天竜川だけでなく、高知県や島根県でも報告されています。
 なぜ、こんなことが起きるのでしょうか? 残念ながら、はっきりしたことはまだ分かっていません。しかし、私は近年の海水温の上昇が早生まれのアユの死亡率を高めているのではないかと考えています。というのも、私が住んでいる高知では秋(アユの産卵期)の海水温が1980年代以降上昇を続けており、特に1994年頃からその傾向がはっきりしてきました。海や河口域で採集したアユの子どものふ化日を調べていると、ちょうどこの頃から、ふ化のピーク時期に遅れ ―早生まれの選択的な死亡によって起きると推定される― が出始めたのです。
 では、海水温が上がるとなぜアユの子が死にやすいのでしょうか? 2つのことが考えられます。
 ひとつは、アユの子どもの塩分(海水)耐性の問題で、実験によると水温が高くなるほど耐性は低下し、特に20℃以上では急激に弱くなります。つまり海に下りた時、水温が高いと塩分に対する抵抗力が弱くなって死ぬ可能性が高いのです。
 もうひとつの理由は、代謝スピードの問題で、変温動物であるアユは、水温が高くなれば代謝スピードもあがります。それを補うためには、次々と餌(動物プランクトン)を摂ることが必要となるのですが、うまく餌に巡り会うことができなければ飢餓に陥ってしまいます。
 こういった理由から、早生まれのアユというのは、もともと「死にやすい運命」にあるということは言えるかもしれません。
 いずれにしても、早生まれが減耗してしまうのは、アユ資源を保全する上で非常にきびしい状況と言わざるを得ません。数的に多い早生まれが帰ってこないとなると、資源が減少するのは当然のことなのですから。
 対策は、海で起きていることだけに難しいと言わざるを得ません(海をコントロールすることは不可能です)。次善の策として、仔魚の数を増やすことがあげられます。早生まれの減耗率は高いのですが、0ではありません。今まで1000尾海に出て1尾生還していたのであれば、10000尾送り出せば、10尾帰ってくることになります。具体的には親魚の保護(夏場からの漁獲規制、産卵期の保護)を行い、産卵数を増加させることや、産卵環境を改善して産卵効率を上げることが必要です。高知県の奈半利川ではこのような対策を10年ほど前から実施して、ここ5年間は遡上量が著しく増加してきました。天竜川でも同じような対策は取られていますが、産卵期の親魚数がまだ大幅に不足しているというのが現状です。
 ご質問の中には「ダムによる土砂供給低下が海の環境を大きく変化させているはず」とあります。それは事実だと思いますが、そのことがアユの生残に直接的に関わっているかどうかはまだ分かっていません。ただ、アユの子は波打ち際を重要な生息域としているので、海岸の変化はアユの子の生息に一定の影響を与える可能性はあると思います。

2.産卵期の問題

 流下仔魚のふ化時期から推定した産卵期は、緩やかに早くなっているようにも見えますが、わずか5年間のデータですので、実際に天竜川のアユの産卵期が早まっているかどうかはもう少し様子を見る必要があります。全国的に見ると温暖化に伴い産卵期が遅れる傾向にあります。

3.冷水病の問題

 冷水病菌に2つのタイプがあることは最近分かってきたことです。天竜川ではどちらが優勢なのかはまだ分かっていませんが、重要な問題でありますから、早急に把握しておく必要があると思います。

(たかはし河川生物調査事務所代表・高橋勇夫)
(たかはし河川生物調査事務所代表・高橋勇夫)

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