天竜川はDO(溶存酸素)が過飽和になっているようです。流れがあって過飽和ということだと、ものすごい生産量のように思われますが、正確な生産量推定にはどのようなことを考えているのでしょうか。
DO (溶存酸素) の飽和度は、水中に溶け込んだ酸素の濃度と、測定時の水温条件で、最大限含まれる酸素濃度との割合で示されます。
例えば、20℃の水は、水1トン当たりは、8.84 gの酸素を含むと100 %飽和になります。「飽和」と言うと、それ以上酸素が溶け込まない状態と思ってしまうかもしれませんが、藻類の光合成が盛んな川や湖では、飽和濃度以上 (過飽和) になることは、ごく普通に見られます。場合によっては、200 % 越す、つまり、飽和濃度の倍以上も酸素が溶け込んでいることもあります。
もっとも、飽和以上の酸素は不安定な状態ですので、ちょっとした衝撃で酸素の泡になり、空中に抜け出します。ビールの缶を叩いてから開けると、この場合は二酸化炭素ですが、溶け込んでいたガスが泡となって吹き出すのと同じことです。
泡になった酸素は測ることができませんので、生産を低めに見積もってしまいます。瓶に水を詰めて、酸素濃度から生産を測る場合には、酸素の泡が出ない程度の時間内で実験を済ませ、その影響がでないようにしますが、川の酸素の増減から測る方法では、泡が出てしまうとお手上げです。この生産測定方法は、50年以上も前に考案されたのですが、このような欠陥をいくつか抱えています。現場で試行錯誤を繰り返し、どの程度の信頼性があるのかを確認しているところです。
(名古屋女子大学家政学部教授・村上哲生)