Q&A シンポジウム2017編

当日、会場で寄せられた質問をまとめました。TOPへ。

藻類の生産量を増やすために効果的な対策はありますか?

付着藻類も植物ですから、畑の中の作物を育てるのと一緒です。つまり、光と栄養塩・栄養分、特に付着藻類の場合は窒素・リンが供給されることが重要なのです。アユの漁場は河原が広く発達した中流域なので光は十分入ります。問題はそれらが水の中に入って減衰していくことです。その原因が濁り。一般的には、川に入る光が100分の1ぐらいに減衰してしまうと藻類や水草は生えないといわれています。天竜川ではざっと計算すると、濁りが強い時期に1mより浅い所でしか付着藻類が生えません。濁りによって藻類が生える範囲や深さが限定されることが一つの大きな問題です。
窒素やリンは、川の場合はまず不足することはありませんが、今、私が懸念しているのはそのバランスです。天竜川の水質調査が始まったのは1960年代ですが、そのころから比べると窒素はかなり増えていますがリンはほとんど増えていません。本来であれば、人の活動により窒素もリンもともに増えているはずですが、リンの一部はダム湖に沈むので窒素とリンのバランスが随分変わってきているのです。このような比率の変化が付着藻類にどのような影響を及ぼすのかはまだわかっていません。
もう一つ大きな問題があります。隣の矢作川でもそうですが、アユの餌にとって有用な付着藻類が増えなければいけない礫などの付着基盤に糸状緑藻類が生えているのです。その理由についてはいろいろな意見があるのですが、礫がなかなか動かないということが一つの原因であると思っています。転がる石にはコケが付かないということわざのとおり、石がじっとしていると薄い皮膜藻類がだんだん厚くなって、糸状の藻類が出てくるような変化が生じます。これも餌として有用な付着藻類が付かない原因ではないかと思います。
濁りも、窒素やリンの問題も、それから礫が動かないという問題も、全てこれらはダムが原因となっています。だからといって、すぐにダムを壊してしまう、なくしてしまうことが直ちに合意できるわけではありません。光・窒素・リン・それから、土砂の移動、これらをダムがあるという現実を踏まえてどのような改善をしていくかが当面の課題です。これはどこも成功していない非常に難しいことですが、天竜川にとって非常に重要な課題になってくるのではないかと思っています。
(村上哲生理学博士/中部大学応用生物学部環境生物科学科教授)

(村上哲生理学博士/中部大学応用生物学部環境生物科学科教授)