Q&A シンポジウム2017編

当日、会場で寄せられた質問をまとめました。TOPへ。

なぜ2015年の透視度は7月以降低くなったのでしょうか。原因が対策できれば河川生活期の低減化につながり、十分な親魚が確保できるのではないでしょうか?

4月に大きな雨があって流域から大量の濁り水が天竜川に流入してきました。これは長野県からのものが多いのですが、最終的に佐久間ダム湖に流れ込みます。その量が多い場合、ダム湖のかなりの部分が濁ってしまいます。その水が長期間濁ってしまうということは、濁りの発生源は流域全体なのですが、長期化の原因の一つはダムが複数あるという天竜川の特性が影響していると考えられます。
(高橋勇夫農学博士/たかはし河川生物調査事務所代表)

(高橋勇夫農学博士/たかはし河川生物調査事務所代表)

アユの成育阻害になる濁水は河川の上流で生産され海まで流れていくものなので、たとえダムがなかったとしても、河床砂礫の一部にシルトなどが付着することは防ぎようがありません。濁水の問題は、上流からの濁水そのものにありますが、下流での濁水期間が長いか短いかも重要で、長くなる理由がダムにあるということは否定できません。このため私たちはそれを何とか短くしようと努力しています。このことはぜひご理解ください。
たとえば、自然の河川では洪水が終わってしまえばすぐきれいな水になるのですが、いったん流域から流入してくる濁りは佐久間貯水池のような大きなダムに入ってしまうと、貯水池の中で拡散してそのまま溜まってしまいます。すぐにはきれいにならない原因です。そこで、貯水池の中でなるべく拡散させずに早く濁水を通過させるという目的で、現在、佐久間貯水池では濁水防止幕を使っています。
それでも濁水防止幕を設置した年の2年後、その効果が非常に悪かったことがありました。この年は雨の降り方が少し変わったこともあって佐久間ダムより下流の気田川などの支川の河川からの濁りが急に流入したことが原因でした(この時は、佐久間ダムからの水量を少し増やして下流部の濁水を希釈しました)。また、最近は大きな洪水というよりも小さな洪水が続くことが多く、そのためにせっかくきれいになりつつあるところで再び濁ってしまうことが繰り返されています。このように気象の変化にも則し、現場のデータにも着目しながら、効果的な対応策を考えていかなければと考えています。
(喜多村雄一工学博士/電源開発(株)茅ヶ崎研究所専任部長)

(喜多村雄一工学博士/電源開発(株)茅ヶ崎研究所専任部長)