2018年度 第2回 天竜川天然資源再生推進委員会議事録

◆議事概要

  1. 日 時:平成30年11月22日(木)10:00~16:00
  2. 場 所:天竜川、天竜川漁業協同組合2階会議室
  3. 議 案:
    1. 平野委員長開会挨拶
    2. 活動状況の報告
      • 水路型産卵床造成について(東海道新幹線橋上流左岸)
        高橋勇夫委員、喜多村雄一副委員長
      • 湧水型産卵床造成について(国道1号線橋下流左岸)
        竹門康弘委員
      • 河床耕耘について(気田川合流部下流右岸側)
        村上哲生委員、喜多村雄一副委員長
      • 秋葉ダム下流河川環境改善作業について(秋葉ダム下流西川合流地点)
        有川崇委員
      • 船明ダム工事関係について
        中川京洋委員
    3. 委員会の運営について 平野委員長

I.平野委員長開会挨拶

  • 今年度から天然資源再生推進委員会として、天然資源が育つ環境を実現するために現場密着型の組織として活動を行っており、今回は各委員が実施している調査や試験について報告を頂く。

II.活動状況の報告

a. 水路型産卵床造成について(新幹線鉄橋上流左岸) 高橋勇夫委員、喜多村雄一副委員長

  • 東海道新幹線鉄橋の上流部左岸約7km地点において、10/30~10/31に水路型の産卵床を造成した。産卵床は上流端から下流端へ砂州を縦断する形状で開水路を掘削し、水路床にアユの産卵に適したこぶし程度の礫を敷設した。
  • 造成10日後に調査を行ったところアユの産卵は見られなかった。作成した水路は、地形的制限により、水路勾配が小さく、十分に水を引き込むことができなかった。このため、流れの速度が小さく、河床に泥が沈着したことで、産卵に至らなかったと考えられる。
  • 本地点以外では、国道1号上流部で石が転がるような流れがある場所、11㎞地点および15㎞地点で湧水が見られる場所では産卵が見られた。
  • 今年、本地点を含めて6河川8地点で産卵床の造成を行ったが、本地点以外は産卵が見られた。

>> 『アユ産卵床造成実験』ページへ

>> 『産卵床調査―高橋編―』ページへ

b. 湧水型産卵床造成について(国道1号線橋下流左岸) 竹門康弘委員

  • 1月に作成した国道1号線橋下流左岸8km~9km地点の湧水瀬は、9月に6,000m3/sの出水があったものの、その上流側の樹林化した瀬よって守られ維持された。10月の調査では、アユの産卵は確認できなかった。
  • 砂州は出水により移動するので、台風等の後の砂州の形状、状態を衛星画像で確認し、このうち手を入れて湧水瀬となる砂州を選定して造成する方が効率が良い
  • 12月~1月に国道1号の橋脚工事が行われる予定で、橋脚周辺を止水するため、8~9km地点の表土を使用する予定となっていた。浜松河川国道事務所から掘削について相談を受け、産卵床造成を考えた掘削を提案した。今後も情報交換を行って掘削と産卵床造成の両方が同時に行えるような工夫を行っていきたい。

>> 『産卵床調査―竹門編―』ページへ

c. 河床耕耘について(気田川合流部下流右岸側) 村上哲生委員、喜多村雄一副委員長

  • アユの食餌となる付着藻類を更新して、アユが生息しやすい環境を整えるため、8月7日に気田川合流点下流右岸でブルドーザーによる河床耕耘を行った。
  • ブルドーザーのブレードを下して耕耘した場合、礫の殆どが転動して老化した付着藻類が剥離した。
  • その後、台風等の降雨による出水が複数回あり、付着藻類が減少したものの、強い耕耘によって河床の老化した付着藻類の被膜が除去されたことで、その後の再生を促したと考えられる。
  • ブルドーザーのみ(ブレードを下さない)による耕耘では、付着藻類被膜と河床堆積物の状態の改善効果は小さい。ブルドーザーのブレードを下して耕耘すると、付着藻類被膜と河床堆積物の両方で改善が認められたので、この方法はアユの生育に適した河床を整備する方法としては有効である。
  • ブルドーザーによる耕耘は、河床洗浄に比べて人手が少なくても実施できる。

>> 『河床耕耘試験』ページへ

d. 秋葉ダム下流河川環境改善作業について(秋葉ダム下流西川合流地点) 有川崇委員

  • 秋葉ダム下流河道(秋葉ダム直下流地点)に、「アユ漁場となる瀬の再生」を目的として、秋葉調整池の堆砂処理で発生した巨石をH29年3月、H30年3月に投入した。
  • 出水により西川(支川)から供給された砂利が下流へ広がり、巨石の間に砂利が詰まった状態となった。造成した瀬の外形は出水後も維持されている。巨石にはアユのハミアトが確認された。
  • 今後、瀬の下流端付近に巨石を追加して一連の瀬を完成させる。その際には、流れが分散している瀬の下流端付近の河床地形を整形し、左岸側へ向かう流れを強くする予定である。

e. 船明ダム工事関係について 中川京洋委員

  • 船明ダムでは11月~3月にかけて、船明調整池を抜水してダム補修工事(洪水吐ゲート水密ゴム取替、ダムクレスト補修)等を実施している。この抜水により調整池内の水位が低下(利用水深▲12m程度)し、自然河川状態となっている。また、当該期間中に上流にある浜松市が管理しているボート場競技コースの水深確保の為、河床整備を実施する。
  • ダム補修工事期間中は発電停止となって天竜川下流用水の取水に支障があるため、下流盛土堰を設置して水位を上げる取水対策工事を実施した。また、鹿島地点の基準放流量と天竜川下流用水量の合計量(90m3/s)を最低量とし、流況に合わせて秋葉系発電所から流量を調整して放流している。

>> 『船明ダム湖の水、全部抜きました』ページへ

III.委員会の運営について 平野委員長

  • 推進委員会は原則年2回としていたが、作業計画の見直し変更の可否決定や次年度の活動計画立案の事前協議が必要性なため、原則年3回としたい。
    第1回目は、活動計画の提案採択(4月開催)
    第2回目は、活動状況の進捗状況(中間報告)と活動計画の見直し(11月開催)
    第3回目は、活動結果の報告と成果まとめ、次年度活動方針の検討(2月開催)

【配布資料】

  • 水路型産卵床造成について:高橋委員資料、喜多村委員資料
  • 湧水型産卵床造成について:竹門委員資料
  • 河床耕耘について:村上委員、喜多村委員資料
  • 秋葉ダム下流河川環境改善作業について:有川委員資料
  • 船明ダム工事関係について:中川委員資料
  • 本委員会の運営に関する提案:事務局資料
  • 天竜川流砂系総合土砂管理計画:天竜川流砂系協議会

【出席者】

委員長 平野國行 天竜川漁協 代表理事組合長
副委員長 喜多村雄一 電源開発(株)茅ヶ崎研究所専任部長
委  員 高橋勇夫 たかはし河川生物調査事務所代表
村上哲生 中部大学応用生物学部環境生物科学科教授
竹門康弘 京都大学防災研究水資源環境研究センター准教授
有川 崇 近自然河川研究所代表
中谷 勲 天竜川漁協 理事・総務委員長
鈴木長之 天竜川漁協 理事・業務委員長
松下和明 天竜川漁協 理事・総務副委員長
津田英作 電源開発(株) 中部支店副支店長
中川京洋 電源開発(株) 佐久間電力所長代理
アドバイザー 福本晃久 国土交通省浜松河川国道事務所 調査課長
吉川昌之 静岡県経済産業部水産業局水産資源課 資源増殖班長
事務局局長 谷髙弘記 天竜川漁協 事務局長
事務局副局長 畠 誠二 電源開発(株) 中部支店用地グループリーダー
事務局員 服部芳明 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
高橋宏明 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
オブザーバー 内山冨人 天竜川漁協理事
山田 博 天竜川漁協理事
金原美光 天竜川漁協理事
若松時吉 天竜川漁協監事
吉澤和明 電源開発(株) 佐久間電力所
高橋真司 京都大学防災研究水資源環境研究センター
山崎弘美 京都大学防災研究水資源環境研究センター
足立京子 静岡淡水魚研究会