▲産卵床造成の最終工程。人間の足で河床をできるだけフラットな形状になるように踏み馴らす頃には気温も下がり、日が落ちはじめてきた。
▲産卵床造成予定地をドローンから撮影。(で囲まれたエリア)上が下流、下が上流。このエリアでは川が蛇行しているため左から右に流れている。[提供:電源開発(株)]
▲造成工事前の瀬の様子。前日、産卵床造成予定ポイントにくい打ちを済ませる。(下流方向から撮影。左奥にJR東海道線の鉄橋が見える)
▲工事前に付近の濁度や水質を調べた他、成分分析のために河水を採取。
今年は相次ぐ天候不順により、天竜川天然資源推進委員会が予定していた調査や実験、天竜川漁協のイベント等の多くが中止を余儀なくされました。夏以降も4000tクラスの洪水が2回、6000tクラスが1回発生し、長い間川の水が濁っている状態が続くなど環境条件が芳しくない中で、昨年に引き続き、全国でアユの産卵床を多数造成し、成果を残している高橋勇夫農学博士の指導の元、産卵床の造成が行なわれました。
また、今回の産卵床造成に並行して、水質調査、動植物調査、付着藻類の生物量調査、河床軟度や河床堆積物の調査も行われました。
まず、本流の流れに沿って上流端から下流端へ平行に縦断する形で、幅10m、長さ100m、深さ30cmで掘り出した河床の土砂で盛土を形成。本流との間に土手を作って産卵床の大枠を作りました。(完成サイズは幅7〜8m、長さ約135m、深さ20〜30m)
続けて産卵に適したこぶし程度のサイズの礫を河床に投入後、ブルドーザーが出動。産卵床を何往復か走行し、キャタピラを用いて礫の泥を落とすと同時に河床をならしました。最後に待機していた天竜川漁協関係者や内水面漁協などの方々が産卵床に入り、人力で河床の凹凸を踏みならして産卵床が完成しました。
なお、今回、本流よりも速い流れを維持する意図もあり、産卵床側の河床の勾配を本流側よりも大きくなるように掘削。また、上流より流れて来た水が勢いを落とすことなく産卵床に流れ込まれるように、上流部には導流堤も設けられました。この他、掘削の際に一時的に生じる濁りが下流へ大きく影響しないように防護膜も設置するなど、環境への最大限の配慮も心がけました。(防護膜は作業の翌日に撤去。)
▲重機2台で、それぞれ河床を掘り盛土の土手を作る。
▲次に2つの土手を連結して土手が完成。
▲導流堤の掘削の際、一時的に大量の濁水の発生が懸念されたため「防護膜」を設置。
▲産卵床造成地下流部で村上哲生中部大教授チームがこのエリアでのアユの餌となる藻類の生育状況を調査。同時に水質検査(写真左)や透視度調査(写真右)も行なわれた。
当初、一部で心配された掘削によって生じる濁水の発生は、魚類等の水生生物への配慮も兼ねて可能な限り少量に分けて作業が進められた他、急激な導水を避けたこともあり掘削後20分〜30分程度で収まり、下流への影響は最小限の範囲に収まったと思われます。
こうして、翌日に予定されていた保育園児による『親アユの放流会』も無事開催できるようになりました。
▲産卵に適したサイズの礫を河床に投入後、ブルドーザーが出動。産卵床内を数往復することでキャタピラが礫の汚れを剥ぎアユの餌となる藻類の付着を促す。写真は後退中。ここでは後退の方が効果が大きいように見られた。
▲この日は気田川や阿多古川などの静岡県内水面漁協や河口の稚アユ採捕組合からも参加。翌日に控えている「聖隷こども園 こうのとり豊田」の園児によるアユの放流会に間に合うように河床を馴らした。
▲完成した産卵床。上流部手前(画面右上)に導流堤が設けられている。河床は下流(画面奥)に行くに従って深くなり、河水の流速が増すようになっている。画面奥は新幹線の鉄橋。