第2回天竜川 天然アユ資源の再生に取り組む会

◆議事概要

  1. 日 時:2022年8月9日(火)13:30~14:40
  2. 場 所:電源開発㈱天竜事務所
  3. 議 案:
    1. 開会挨拶(平野会長)
    2. 年間スケジュール
    3. 今年度の産卵場造成方法等について(高橋先生)
    4. その他(国土交通省、静岡県)
    5. 第2回取り組む会の講評(平野会長)
    6. 次回開催の日程調整(アユの産卵床造成作業、事務連絡)

1.開会挨拶

  • 本日は、お忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。暑い日が続いておりますが、現在、文明発展のツケによる温暖化により、世界中で豪雨、土砂崩れなどの災害に見舞われています。天竜川では幸い災害も無く、昨年度のアユの流下が多く、今年のアユの遡上もこれまでに無い数となっています。例年、解禁から1ヶ月以内に豪雨によって釣りができない状態となりますが、今年は運よく釣りができる状態が長く続いています。漁期の9月末までは、いろいろな取り組みをしながら組合員、遊漁者を楽しませたいと思っています。引き続き皆様のお力を借りてアユの数を増やしていきたいと思っていますので、よろしくお願い致します。 

2.年間スケジュール

  • 5月に実施した河床耕耘作業についての結果・コメントを配布資料に記載している。10月にアユの産卵床造成作業を行う予定であり、場所が決まり次第周知する予定である。(事務局)

3.今年度の産卵場造成方法等について

  • まず、昨日、今日、秋葉ダムから河口までの8地点を潜水調査の結果から話しておく。この調査は10年近く継続しているが、一番アユの数が多く、船明ダムより上流では、アユのカーテンのようになって過密となっている地点もある。
  • 8月上旬としては、成長はひどく悪いというレベルである。この原因は、エサの状態が悪いためと考えられる。船明ダムより上流では、カワシオグサが繁茂している。アユがカワシオグサを摂取しても栄養とならない。
  • 2006年から産卵床を検討しており、大きく水路タイプ、河床撹拌タイプの2つがある。水路タイプは砂州に水路状の溝を成形し、バックホウで砂利を投入し、ブルドーザー、排土板で均し、最後は人力で仕上げをするものである。
  • 河床撹拌タイプは、2007年に天竜川寺谷地点で実施しており、浅瀬の河床を撹拌し、砂泥を洗浄した後に大礫をできるだけ除去して造成するものである。天竜川では実施していないが、オプションとして、大礫を除去した後に砂州上に産卵に好適な小礫があれば、それを投入・敷設すると効果が大きい。
  • 天竜川では、河床撹拌タイプ、水路タイプのどちらでも、国道1号線下流であれば採用できる。2007年には撹拌タイプで実施した場合、1000m2の産卵実績があったが、それ以外は、水路タイプ、撹拌タイプともに産卵規模はごく小さいか、産卵なしで終わっている。
  • 天竜川では、水深1m前後以上の深瀬に産卵場があり、他の河川と比べて稀なことである。天竜川では、深瀬に広大な産卵場としてのポテンシャルがあり、産卵場造成の効果は得られにくいと判断される。
  • 費用対効果を考慮して、産卵床造成費用を他の河床耕耘などの対策に振り分けるかの検討が必要である。
  • 5月に実施した河床耕耘では、直後の6月には明らかに効果が見られたが、その後7月以降は効果が見られていない。また、現場にはカワシオグサがびっしり繁茂しており、これにより、石の上の藻は、摂餌しにくくなっている。
  • 秋葉ダムに堆積した比較的粒径の小さい2mm〜5cmまでの礫を使えるならば、置土して中小規模出水時に流下させて、石の上の藻をはぎ取る効果が期待される。また、秋葉ダムから船明ダムまでにカワシオグサが繁茂して、アユ以外の生物にも悪い影響を与えている可能性があるので、本来の河川に戻すという観点から対策が必要と思われる。
  • 産卵場となる水深1m前後の深瀬とはどこあたるのか?
  • →国道1号線から東名の間ぐらいと考えられる。
  • カワシオグサは、他の生物で利用していないか?
  • →昆虫の仲間では利用しているようであるが、魚類では無いようである。
  • 深瀬タイプの産卵床造成は効果があるのか?
  • →深い為、作業性は低い。深瀬の河床はフラットにする必要があり、技術的にも難しいと思われる。
  • 深瀬の産卵床の規模感はどの程度か?また、産卵床に親魚を放流することも考えた方が良いのでは?
  • →天竜川寺谷地点から国道1号線辺りの深瀬で、1万m2〜2万m2のポテンシャルがあると考えられる。天竜川以外の河川では、水路タイプの産卵床に親魚を放流したケースもある。
  • アユが深瀬を好む理由は?
  • →浅瀬の河床は、アーマ化して固くなって産卵に向かず、アユが深瀬を適地としたと考えられる。
  • 30~40年ほど前では、特に船明ダム下流の浅瀬に多くのアユが産卵していた。アユは浅瀬で産卵するものと考えていた。他の河川でも深瀬で産卵しているか?
  • →殆どの河川では、アユは浅瀬で産卵している。天竜川は特殊であり、これまでの調査によると、深瀬で産卵していることは間違いない。
  • 深瀬には伏流水による湧水があり、それが深瀬での産卵の理由では?
  • →湧水により河床がソフトになったことも考えられる。
  • 産卵床造成以外の方法として、置土によってアユの成長に悪影響を与えるカワシオグサの繁茂を抑える方法もある。
  • アユの産卵には、河床の材料、流速、水温などいろいろな条件が影響すると考えられるので、継続して地道に対策を調査していくことが大事である。

4.その他(国土交通省、静岡県)

    (国土交通省)
  • 国土交通省では、現在、湾処の調査を実施しており、この中で伏流水の有無についても確認している。調査結果については、今後、共有する予定である。また、河川工事時にアユの産卵など意識した工夫などもできれば良いと思っている。
  • 5/24に付着藻類の調査を実施し、昨年度確認された緑藻綱は確認されなかった。緑藻綱にはアユの餌に悪影響を及ぼすカワシオグサなどの糸状緑藻類も含まれるので、今後の調査では注視していく予定である。5/30〜6/9の魚類調査では、初めて確認された種は無く、前回と同じであった。この中には外来種があり、憂慮している。
  • (静岡県)
  • 静岡県では、水産資源に対して目標増殖量を設定し、これに従ってアユの放流を行っているが、産卵場による増殖量はこれに含めていない。静岡県では各漁協に対して漁業権を付与し、10年ごとに更新をしている。来年は、漁業権の更新時期に当たることから、今年、漁場の調査を行っている。どの漁場でもアユの遡上が良好と聞いている。
  • コロナ禍の影響で調査費がひっ迫している中、天竜川でこのような調査して頂いていることは助かる。

5.第2回取り組む会の講評

  • 本日はありがとうございました。礫の投入や置土によるカワシオグサ対策などのお話もありました。引き続き、できる対策を実施していきたいと思っていますので、いろいろとご提案をよろしくお願いします。

6.次回開催の日程調整

  • 次回第3回の取り組む会は、産卵床造成時期と合わせて10月中旬〜下旬を予定している。産卵時期を考慮して少し早めた方が良いというご意見もあったので、日程調整して別途皆様へご連絡する。

【配布資料】

  • 天竜川天然資源アユ資源の再生に取り組む会 名簿
  • 「天竜川天然資源の再生に取り組む会」年間スケジュール
  • 天竜川天然資源アユ資源の再生に向けた取り組み -産卵場造成方法と必要性の検討-
  • 令和3年度天竜川環境調査検討業務総合土砂モニタリング調査 付着藻類、魚類調査速報

【出席者】

会長 平野國行 天竜川漁協 代表理事組合長
副会長 喜多村雄一 電源開発(株) 茅ヶ崎研究所 専任部長
メンバー 中谷 勲 天竜川漁協 理事・総務委員長
鈴木長之 天竜川漁協 理事・業務委員長
平野利明 天竜川漁協 理事・総務副委員長
野澤利治 天竜川漁協 理事・業務副委員長
谷髙弘記 天竜川漁協 事務局長
田中裕太 国土交通省河川国道事務所 調査課長
鈴木進二 静岡県経済産業部 水産・海洋局水産資源課 資源増殖班長
野々村誠一郎 電源開発(株) 中部支店副支店長
鈴木紀光 電源開発(株) 中部支店用地グループリーダー
市川雅典 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
小太刀理久 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
赤崎春奈 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
森山貴彦 電源開発(株) 佐久間電力所長代理
家入峻介 電源開発(株) 佐久間電力所
アドバイザー 高橋勇夫 たかはし河川生物調査事務所代表
有川 崇 近自然河川研究所
記  録 小林英次 (株)J-POWERビジネスサービス 社会環境部 部長代理
石井健一 (株)J-POWERビジネスサービス 社会環境部 メンバー