2018年1月15日〜17日、国道1号線の下流、河口から8.2km〜9.1km地点の天竜川左岸砂州で、昨年の『シンポジウム2017』で竹門康弘京都大学准教授が提唱したアユの産卵床造成が行われました。これは、砂州の下流側に産卵床を造成するとともに、砂州の上端部に湧水の導入路を掘削することで砂州の濾過機能を高め、アユの産卵に適する澄んだ湧水を産卵床に流し込むというもの。結果の出る今年の秋へ期待が高まります。
今回の実験には次の3つの大きな要素があります。
(1)砂州が濁水を濾過する働きを高める。
砂州内に砂や細かい粘土などが増えると目詰まりを起こして砂州の濾過機能が低下する。そこで幅 4m 深さ 1m の導水路を設け、内部をできるだけ大きな礫で構成することで伏流水の流れをできるだけスムーズにし、砂州が濁水を濾過する働きを高める。
(2)ワンドに湧き出たきれいな湧水を産卵床へ導く。
砂州で濾過された伏流水を直接産卵床に流すために、たまりとワンドと水路で直結し、産卵床の瀬の流量を増やす。
(3)好適な産卵床を創出するためにワンドに瀬を造成する。
ワンドの下流端に産卵に適した形状の瀬を造成し、そこに流量を増やした湧水が流れ込むようにする。
今回造成した産卵床は砂州の下流側に位置することから、台風による洪水が来ても水裏となり激流の直撃を避けられます。また、過去の実験では、 2-3年後の繁殖期にも機能することがわかっています。
残念なことに、導水路の掘削のために砂州を掘り返したところ、表層に比べて地中では細かい土砂の割合が高いことが判明しました。このため埋め戻しに適した大きな石礫の確保が困難になり、導水路の幅を2m程に縮小せざるをえませんでした。「当初に想定した湧水量の増加には達していないものの掘削によって土砂の隙間が増え水通しが良くなったことは確か」(竹門康弘京都大学准教授)と、この秋のアユの産卵に期待を寄せています。