2019年度 第2回 天竜川天然資源再生推進委員会議事録

◆議事概要

  1. 日 時:2019年11月15日(金)10:00~15:00
  2. 場 所:天竜川、天竜川漁業協同組合2階会議室
  3. 議 案:
    1. 開会挨拶(平野委員長)
    2. 今年度の活動状況の報告、課題に関する討議、方針確認
      • 水路型産卵床造成について(於:国道1号線橋上流左岸)
              高橋勇夫委員、喜多村雄一委員
      • 湧水型産卵床造成について(於:かささぎ大橋上流右岸)
              竹門康弘委員
      • 河床耕耘について(於:雲名橋上流左岸側)
              村上哲生委員、喜多村雄一委員
      • 秋葉ダム下流河川環境改善作業について
        (於:秋葉ダム下流西川合流、鮎釣地点)
              有川崇委員
    3. 次回開催の日程調整、事務局連絡

I.開会挨拶(平野委員長)

今回は各委員が取り組んでいる現場に行き、活動状況のご報告をして頂くと共に、課題等に関する活発な討議をお願いしたいと思います。

II.今年度の活動状況の報告、課題に関する討議、方針確認

a. 水路型産卵床造成について (高橋勇夫委員)

■産卵床造成の場所は、以前の調査で産卵場所と考えられた国道1号線橋上流左岸の砂州とし、上流側端から下流端へ砂州を縦断する開水路を掘削し、水路床にアユの適した粒径の砂礫を敷設する計画としていた。しかし、造成予定の10月には、雨による増水によって河川水位が上昇し、造成作業が実施できなかった。このため造成は来年度以降に延期することとなった。

  • 天竜川の場合、流速が遅いと造成しても砂礫間に土砂が入ってしまい、アユの環境としては適さない。
  • 流速が重要な要素となり、ある程度の流速が必要である。
  • 産卵床が産卵のピークとなる10月に造成できない場合(11月に遅れる場合)は、水温低下により流速の速い場所では産卵しなくなるので、造成する意味がなくなる。

b. 湧水型産卵床造成について (竹門康弘委員)

■出水後に自然に作成された湧水路を候補地として選定し、アユの産卵数調査を行った。

  • 調査地点は11.4km地点、14.5kmの2地点とした。
  • 11.4km地点のかささき大橋上流右岸では、アユの卵が多く発見された。これは、産卵期前の出水時に細かい砂利が表層に堆積して、アユが好む柔らかい瀬を形成したものと考えられる。アユにとっては、柔らかい瀬が形成されることが重要である。
  • 自然に作成された湧水路では、産卵したアユが本川に戻れるような地形であることが重要である。(高橋委員)
  • 湧水路は下流側で本川に合流する方が良い。(竹門委員)
  • この地点以外に、支川の瀬の上流側で産卵が確認されている。ここでは高い溶存酸素濃度が測定された。

c. 河床耕耘について(村上哲生委員/喜多村雄一委員)

■今年5月に河床の礫に付着しているシルトや糸状緑藻類を洗浄して、アユの食餌となる珪藻・藍藻類を更新する目的で、ブルドーザを使った河床耕耘を行った。

  • 河床耕耘は雲名橋上流側の200m区間を対象に上流側を締め切り、ブルドーザの後方に備え付けのリッパー(爪)を下げて走行した。
  • 河床耕耘に伴う濁度は昨年に比べて早く低下したが、ブルドーザの重みにより礫の破壊が目立った。
  • 耕耘後の効果を確認する為、3回の調査(河床耕耘4日後、12後、19日後)行った。
  • 1回目の調査結果では、礫の老朽化した皮膜膜が殆ど剥離し、付着藻類の新しい皮膜が薄く再生しおり、それをアユが摂食した痕跡が観察された。また、全ての藻類(藍類・珪藻・緑藻)が増加し、ブルドーザによる河床耕耘が、アユの生育に適した河床を整備する方法として有効であると考えられる。
  • 秋葉ダム下流域から河口までの河川に対して環境DNA調査を実施し、アユのハミアト被度との相関が見られた。船明ダム直下など実際の生息域と異なる結果となっている地点については、現在分析中である。

d. 秋葉ダム下流河川環境改善作業について (有川崇委員)

■河床洗堀により小規模化した早瀬(アユ漁場)を再生させるため、堆砂処理で発生した巨石を投入して瀬の骨格の再生を行った。改善作業は2017年3月~2019年2月に3回行い、現在、モニタリングを続けている。

  • 2019年は、昨年に比べて出水が少なかった。
  • 全体的には造成した瀬の外形に大きな変化は無かった。昨年の秋季調査時に堆積していた大量の土砂が流下し、埋没していた巨石がでてきた。西川合流点部の水制が破損し、そのコンクリート塊が巨石盛土箇所に流下してきた。このコンクリート塊の衝突のためではないかと思われる巨石(2個)の流失があった。
  • 流心に平石を置くとアユが好むコケが繁殖しやすい(村上委員)
  • 瀬の縦断形状は良いが、横断形状が単調なため、横断方向の地形変化を付けた方が良い(高橋委員)。今後、村上委員・高橋委員と連携しつつ、漁協さんからもご意見を頂きながらこのプロジェクトを進めて行く。(有川委員)
  • 西川合流地点では支川と本川の河床に落差があるため、巨石盛土をして河床を上昇させて落差を解消させる予定である。造成工事は2月頃を予定している。この落差解消によりアユが移動しやすくなり、生息に適した環境になるものと考えている。

【配布資料】

  • 2019年度(第2回)天竜川天然資源再生推進委員会スケジュール(事務局)
  • 土地の形状の変更(高橋委員)
  • 天竜川のアユ産卵床探索に関する現場調査計画書(竹門委員)
  • 天竜川天然資源再生推進委員会 河川耕耘試験 概要報告(喜多村委員)
  • 2019年度(第2回)天竜川天然資源再生推進委員会資料(村上委員)
  • 環境DNAに関する資料(喜多村委員)
  • 秋葉ダム下流河道における河床環境改善の対策(有川委員)

【出席者】

委員長 平野國行 天竜川漁協 代表理事組合長
副委員長 喜多村雄一 電源開発(株)茅ヶ崎研究所専任部長
委  員 高橋勇夫 たかはし河川生物調査事務所代表
村上哲生 中部大学応用生物学部環境生物科学科教授
竹門康弘 京都大学防災研究水資源環境研究センター准教授
有川 崇 近自然河川研究所
中谷 勲 天竜川漁協 理事・総務委員長
鈴木長之 天竜川漁協 理事・業務委員長
野澤利治 天竜川漁協 理事・業務副委員長
津田英作 電源開発(株) 中部支店副支店長
中川京洋 電源開発(株) 佐久間電力所長代理
アドバイザー 福本晃久 国土交通省浜松河川国道事務所 調査課長
吉川昌之 静岡県経済産業部水産業局水産資源課 資源増殖班長
事務局局長 谷髙弘記 天竜川漁協 事務局長
事務局副局長 及川 孝 電源開発(株) 中部支店用地グループリーダー
事務局員 服部芳明 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
高橋宏明 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
記  録 小林英次 (株)J-Powerビジネスサービス 社会環境部長代理
オブザーバー 高橋真司 京都大学防災研究水資源環境研究センター
山崎弘美 京都大学防災研究水資源環境研究センター
足立京子 静岡淡水魚研究会(竹門先生随行)
山下健太郎 国土交通省浜松河川国道事務所 水防企画係長
中川 武 電源開発(株) 佐久間電力所 所長補佐