◆議事概要
- 日 時:2019年4月24日(木)13:30~16:30
- 場 所:天竜川漁業協同組合2階会議室
- 議 案:
- 開会挨拶(平野委員長)
- 各委員より提案内容説明
- 高橋勇夫委員
- 村上哲生委員
- 竹門康弘委員
- 有川崇委員
- 喜多村雄一副委員長
- その他(話題提供) 国土交通省 浜松河川国道事務所 福本調査課長
- 次回開催の日程調整、提案書提出期限の連絡 事務局
I.開会挨拶(平野委員長)
2019年度の重点取り組み目標と主たる活動計画は、以下の通りである。
(1)重点取り組み目標
1)天然アユ産卵場所特定調査(環境DNA等調査方法の検討)
2)湧水を活用した産卵床造成技術の創出(纏め)
3)秋葉ダム下流の河川環境改善作業の効果検証(アユ生息、餌環境)【継続】
4)餌環境改善対策の検討(河床耕耘、人工的餌場環境創出方法の検討)
5)森林荒廃に関する勉強会の準備(情報収集、講師選定等の検討)【継続】
(2)主たる活動計画(基礎調査の継続、増殖事業と啓発活動)
1)天然アユ資源の生態、生息状況調査 の実施
2)産卵床造成と親アユ移殖放流(子供たちの放流イベント計画)の実施
3)秋葉ダム下流の河川環境改善作業の実施
4)活動状況の周知(HPの活動継続)、他河川漁協、研究機関との連携【継続】
II.各委員より提案内容説明
a. 高橋勇夫委員
(1) 天然アユ資源の生態、生息状況の継続調査(アユの生息状況・資源水準等のモニタリング)
1)流下仔魚調査
- 2018年10月~12月に天竜川漁協が採集した流下仔魚試料80検体(予定)の卵黄指数(ふ化後経過日数の目安)を分析して流下量の変化を推定する。
2)遡上調査
- 国道1号付近で2019年2月~6月に特別に採捕した稚アユから採集日とふ化日を推定する。また、アユの採捕尾数の経時変化から遡上規模、流下量の増減パターンと遡上魚のふ化日を比較して、時期のズレの有無から減耗などを確認する。
3)夏季分布状況調査
- 河口から秋葉ダムの間で2019年6月~9月にハミアト被度を調査して、資源レベルや分布状態を推定する。
4)産卵状況調査
- 河口から寺谷の間の代表的な瀬および2019年に造成した産卵場を対象に潜水調査を行い卵着卵分布を調査する。
(2)天竜川に適した産卵床造成技術の創出(水路型産卵場造成試験の技術開発)
- 掛塚橋から国道1号線の間で産卵場を造成する。地点は環境状況を見ながら選定する。
(3)河床環境の整備に係る現地試験・対策(秋葉ダム下流釣り場形成)
- 河床環境再生事業(漁場造成)の効果として、秋葉ダム直下、鮎釣地点の河道整成を調査する。
-
産卵総数を調査するのか?(村上委員)
→産卵の総数を調査するものでは無い(高橋委員)。
→環境DNAから推定できないか今後検討していく予定である。(喜多村委員)
-
国道1号付近を調査地点と決めた理由は?(村上委員)
→重機が入れるため(高橋委員)
- (1)は採用、(2)は採用、但し施工計画策定に際してはJP茅ヶ崎研究所、事務局と事前調整を行う。(3)は採用、但し調査方法については、村上委員、有川委員と事前調整を行う。(事務局)
b. 村上哲生委員
(1) 秋葉ダム下流の河川環境改善作業の実施(作業後の微環境及び餌資源)
-
秋葉ダム下流に置かれた巨石群が河川の微環境に及ぼす影響、特にアユの餌資源となる付着藻類群集に及ぼす影響を以下の項目について調査する。
1)巨石群周辺の水温と流速の微分布測定
2)巨石間に堆積した礫の粒度分布
3)巨石面、及び礫面の付着藻類群集の現存量及び種類組成
- 付着藻類の採集はベンチトーチを併用するため、JPと連携が必要。
- 巨石の付着藻類を調べることは、周辺の流れの調査にもなる。
(2)船明上下流の河川完工改善作業の効果検証(河床耕耘)
-
ブルドーザーのブレードを用いた河床耕耘を昨年度と異なる地点(船明ダム)で実施して河床耕耘の効果を確認する。実施後、1週間ごとに河床の変化を観測する。
調査項目は次の通りとする。
1)作業前後の付着被膜の性状の観察 (重量、有機物含量、及びクロロフィル量)
2)作業に伴い流出する濁りの広がりと持続時間の測定
3)作業後の付着被膜の変化
- また、藻類被膜の剥離よりも礫のひっくり返しが効果があること、耕耘効果の持続時間、発生する濁りの流出時間と範囲、広域の耕耘を行うための単位面積当たりの費用の概算の検討も行う。
- 次年度以降の課題として、JP茅ケ崎実験所の屋外水路で、天竜川水質に類似した水質の水を流し、藻類被膜の発達過程を追跡する模擬実験ができないか、検討していただきたい。
(3)全水系を対象とした濁り発生場所の調査
- 天竜川本川、及び主要な支川、計30地点で予備的に、濁りの観測を行う。
(4) Nuisance Algae (迷惑藻類) の監視システム
- 肉眼的に認められる程多量に発生する藻類によるアユ漁への障害が今後予想される。漁協、遊漁者、住民等による監視と通報のシステムを作る。
■(1)は採用、但し巨石調査に際しては、ベントトーチを有効活用するようにお願いしたい。(事務局)
■(2)は採用、(3)は外観調査のみとし、具体的なスケジュール等は事務局にて検討する。(事務局)
■(4)は不採用、但し迷惑藻類が発生した場合には、生態・駆除方法等を相談させて頂きたい。(事務局)
c. 竹門康弘委員
(1) 天然アユ資源の生態、生息状況の継続調査(アユの繁殖状況調査)
1)天竜川の湧水流路の定量的把握
- 昨年度の増水前後の衛星画像と現地調査の結果を照合することによって、湧水流路が形成される場所条件を分析するとともに、その結果に基づいて今年の増水前後の衛星画像からアユの生息や繁殖に適した流路の選定を行う。
2)天竜川の湧水流路におけるアユ生息量と環境DNAの関係調査
- アユの環境DNA調査の結果より、アユの生息量の定量化手法や繁殖ポテンシャルの高い湧水路の判断手法を検討する。
(2) 天竜川に適した産卵造成技術の創出(湧水流路における瀬の造成工事とモニタリング調査)
1)天然の湧水流路の産卵床造成
- 今年の増水期に衛星写真を用いて変動量の評価を行い、湧水の多い場所を現地調査によって選定し、アユが産卵できるように湧水流路の産卵床造成工事を実施する。また、洪水規模により、どのくらいの土砂を投入すればよいかの解析も行う。
2)国交省の国道工事との連携
- 昨年、国土交通省の国道1号線改修工事に伴い、必要な土砂を湧水導水路の造成工事から確保するとともに、一部は湧水瀬の置土としても使用した。今後も国土交通省の工事と連携していきたい。
■(1)は採用。但し、衛星写真購入代は、コストダウンを図るようにお願いしたい。(事務局)
■(2)の湧水瀬の造成は、人力での作業とする。また、漁協養殖親アユを放流し、産卵状況を調査する等調査メインの活動をお願いしたい。(事務局)
d. 有川崇委員
(1)河道環境の整備に係る現地試験・対策(秋葉ダム下流の河川環境改善作業の効果検証)
- 河床改善対策の一つとして、巨石(ダム堆砂処理の発生材)を使った瀬の再生手法を確立する(過年度からの継続)。
1)過年度の対策箇所におけるモニタリング調査の実施
- 昨年度までに巨石(ダム堆砂処理の発生材)を使った瀬の再生対策を実施した秋葉ダム直下流地点と鮎釣地点において、モニタリング調査を実施し、瀬の再生手法の確立を目指す。
2)新規対策(西川合流地点)の実施
- 本年度は、支川西川と本川天竜川との合流地点において、河床低下に伴う本支川間の落差を解消して、魚類の移動性を確保するための対策を、上記の巨石を使った瀬の再生手法を応用して実施する。
■上記計画は採用(事務局)
e. 喜多村雄一副委員長
(1)新しい環境調査技術に関する適用性調査(環境DNAの活用)
-
河川環境調査技術として、環境DNAによる評価やその他の調査方法の適用性について評価する。特に、産卵場所の特定や産卵床の効果、他への適用を目指す。今年度は、以下の項目について行う。
1) 環境DNA(eDNA)による河川環境評価方法の評価
2) 生物・環境調査、河床変化等の調査技術に関する適用性試験
3) ベントトーチ等簡易環境測定装置の継続的な活用
4) AYU48(アユ生息環境改善選定支援プログラム)による評価事例書の作成
5) 委員会ホームページの運用・保守
(2)天竜川に適した産卵床造成試験
-
天竜川に適した産卵床を造成するための実施可能な技術を創出、提案するために実施される現地試験の施工、評価を行う。2019年度も、引き続き水路式および湧水活用式の造成・創出技術を対象とする。項目は、JP担当分である環境調査結果、施工方法、および各委員の評価方法に基づき行う。今年度は、以下の項目について行う。
1) 事前および事後調査方法の検討
2) 造成のための施工方法の検討
3) 改善効果の評価方法に関する検討
(3)河川環境改善技術に関する試験(貯水池・河川部)
-
アユに適した河道環境の整備方法について、河床耕耘技術により、現地試験を実施し、その効果について評価を行う。また、天竜川の下流河川への影響が大きい佐久間貯水池の水質改善の検討を目指す。今年度は、以下の項目について行う。
1) 重機による河床耕耘・攪拌による河川洗浄の現地試験(東雲名、塩見渡橋)
2) 改善効果の評価方法に関する検討
3) 佐久間貯水池水温濁度調査(通年)
4) 濁水軽減に関する新しい対策技術(紐状ろ材、貯水池流動制御)の佐久間貯水池への適用性の検討、および簡易試験(可能であれば現地試験、一部、水理模型実験)
■(1)(2)は採用。(3)は採用、但し河床耕耘作業については、コストダウンを図る。(事務局)
f. 事務局
今年度の河床耕耘は、船明ダム下流での実施候補地の絞り込みが難しいため、鮎漁解禁前の実施は見送ることとした。船明ダム上流では雲名橋上流部とし5月20日の週に行う予定である。
III.その他(話題提供) 国土交通省 浜松河川国道事務所 福本調査課長
天竜川下流域樹林化対策事業については、漁協と協力して進めていく予定である。
また、道路工事と湧水瀬造成との協力についても、相談させて頂きたい。
【配布資料】
- 2019年度の活動方針:天竜川漁業協同組合
- 各委員の2019年度活動計画(高橋委員、村上委員、竹門委員、有川委員、喜多村委員)
- 2019年度天竜川アユ資源保全調査計画書:高橋委員資料
- 秋葉ダム下の河床改善実験(村上計画書1)、及び河床耕耘実験(村上計画書2)以外の課題について:村上委員資料
- 産卵床発見場所平面図等:竹門委員資料
- 天竜川に適した産卵床造成技術の創出:竹門委員資料
- 調査・対策箇所位置図:有川委員資料
- 平成31年度秋葉ダム下流河道における河床環境改善の対策<西川合流地点の対策>:有川委員資料
- 2019年度 実施計画概要(JP茅ヶ崎):喜多村委員資料
- 2019年度(年間スケジュール):事務局資料
- 2019年度 河床耕転作業計画について:事務局資料
【出席者】
委員長 |
平野國行 |
天竜川漁協 代表理事組合長 |
副委員長 |
喜多村雄一 |
電源開発(株)茅ヶ崎研究所専任部長 |
委 員 |
高橋勇夫 |
たかはし河川生物調査事務所代表 |
村上哲生 |
中部大学応用生物学部環境生物科学科教授 |
竹門康弘 |
京都大学防災研究水資源環境研究センター准教授 |
有川 崇 |
近自然河川研究所 |
中谷 勲 |
天竜川漁協 理事・総務委員長 |
鈴木長之 |
天竜川漁協 理事・業務委員長 |
松下和明 |
天竜川漁協 理事・総務副委員長 |
野澤利治 |
天竜川漁協 理事・業務副委員長 |
津田英作 |
電源開発(株) 中部支店副支店長 |
アドバイザー |
福本晃久 |
国土交通省浜松河川国道事務所 調査課長 |
事務局局長 |
谷髙弘記 |
天竜川漁協 事務局長 |
事務局副局長 |
畠 誠二 |
電源開発(株) 中部支店用地グループリーダー |
事務局員 |
服部芳明 |
電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー |
高橋宏明 |
電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー |
記 録 |
小林英次 |
(株)JPビジネスサービス 環境・防災システムグループリーダー |
オブザーバー |
高橋真司 |
京都大学防災研究水資源環境研究センター |
山崎弘美 |
京都大学防災研究水資源環境研究センター |
足立京子 |
静岡淡水魚研究会(竹門先生随行) |
中川 武 |
電源開発(株) 佐久間電力所 所長補佐 |