第3回 天竜川天然資源再生推進委員会議事録

◆議事概要

  1. 日 時:平成31年2月28日(木)12:50~16:30
  2. 場 所:天竜川、天竜川漁業協同組合2階会議室
  3. 議 案:
    1. 河床環境作業現場(鮎釣地点)視察  解説:有川委員
    2. 活動状況の報告
      • 高橋勇夫委員
      • 村上哲生委員
      • 竹門康弘委員
      • 喜多村雄一副委員長
    3. 次年度活動方針の提示・承認 畠事務局副局長
    4. その他(話題提供) 国土交通省 浜松河川国道事務所 福本調査課長
    5. 次回開催の日程調整、提案書提出期限の連絡 事務局

I.河床環境作業現場(鮎釣地点)視察  解説:有川委員

  • 鮎釣地点の瀬(鮎釣)では、昨年7月の出水に伴って大量の土砂が堆積した。このことにより、瀬の流路が河心側へ移動したが、それと同時に、瀬の下流部では河床勾配が急になって、アユ釣りが困難な流況となった。ここでは、本年2月に流路を右岸方向へ2倍に拡げる掘削を行い、その掘削土を瀬の左岸側と下流側に均して、河床勾配を1/30から1/40に緩くした。そこにダム堆砂処理や掘削時に発生した巨石を礫列状に3列入れた。巨石の据え付けは、上流側から順に流況を調整しながら水中施工した。この対策で、流れを瀬の中心にあえて集めながら、その瀬脇に比較的緩い流れをつくり、アユが居着けるようにした。ただし、この瀬の地形はまだ安定しておらず、今後も変化する可能性が高い。今回は暫定的に流況を改善したが、今後、経過を観察しながら追加策を検討していく必要がある。

II.活動状況の報告

a. 高橋勇夫委員

  • 2017年の流下仔魚(ふ化)は、10月上旬から12月下旬に流下し、総数は13.5億尾で低水準あった。(2009年以降では2番目に多いが、昨年の67億尾に比べて急減)
  • 2017年の主な産卵域は河口から9㎞より下流と推定され、仔魚の流下のピークの時間は18:00~19:00であった。
  • 2018年の遡上量(平均採取量)は41.4尾/1曳網となり、前年に比べて減少した。2018年の関東より以西の太平洋側は遡上量が非常に多かった。主要な河川で前年に比べて減少したのは天竜川のみと考えられる。
  • 夏季のハミ跡被度は6月~8月に20%以下と低く、2018年の不漁と整合している。
  • 2018年の総流下量は0.6億尾で、1996年以降では最低で、天竜川での再生産は危機的な状態に入りつつある。
  • 前年の2017年10月(産卵盛期)の台風によってそれまでに産み付けられていた卵がほぼすべて流失した可能性がある。

b. 村上哲生委員

  • 鮎漁場の餌環境改善として、河床洗浄実験、河床耕耘実験を実施した。
  • 河床耕耘ではブルドーザーのブレードを下げて実施し、一時的に濁りが上昇して酸素が減少するが1時間後には元の状態に戻る。作業3日後の観測ではクロロフィルa密度は作業直後からほとんど増加していないが、シルト・粘土などの付着被膜の無機成分は作業直後の2倍、作業前の1/2に回復していた。
  • このような河床洗浄の効果が、どの程度長続きするかは重要な問題であり、今後調査していく予定である。
  • 一旦清掃された河床に鮎が居ついてくれれば、鮎自身の摂食により、継続的に良好な生息場が維持されることが期待される。今後、河床清掃作業の自動化等を検討する必要がある。

c. 竹門康弘委員

  • アユの産卵期の直近の出水によって、河床が変動して湧水路となる場合がある。
  • 出水後の航空写真から湧水路として有望な地点を選定し、アユの産卵場として整備する方が効率的である。出水後にドローンを使って速やかに地形を測定すべきであり、時間が経過してしまうと地形が変化してしまい無意味となってしまう。
  • 2018年に4,000m3/sを越える出水が3回あった。このうち5,000m3/sの出水でできた砂州の湧水流量が0.31~2.82m3/sで、4,000~18,000個のアユの卵が確認された。
  • 湧水路はアユの産卵床としての機能を果たしている。
  • 出水により砂州が移動して、ろ過効果が大きくなり、濁りが減少する。つまり出水規模と砂州が動く量が分かれば、置土量の目安となる。

d. 喜多村雄一委員

  • 2018年は産卵床の造成、ブルドーザーによる河床耕耘を行った。
  • 佐久間貯水池では2018年には大きな出水が3回あり、貯水池水温濁度を測定した。また、濁水長期化対策としての現地試験・室内試験も行った。
  • AYU48(アユ生息環境改善選定支援プログラム)は当面天竜川で適用しつつ改善して行く。まるっと天竜川(推進委員会ホームページ)にて、引き続き情報発信を行う。
  • 産卵床造成および環境改善(河床耕耘)の効果を、アユの環境DNA(eDNA)を用いて評価中である。

III.2019年度の活動方針として、以下に重点取り組み目標、主たる活動計画(基礎調査の継続、増殖事業と啓発活動)を示す。

1.重点取り組み目標

  1. (1) 天然アユ産卵場所特定調査(環境DNA等調査方法の検討)
  2. (2) 湧水を活用した産卵床造成技術の創出(纏め)
  3. (3) 秋葉ダム下流の河川環境改善作業の効果検証(アユ生息、餌環境)
  4. (4) 餌環境改善対策の検討(河床耕耘、人工的餌場環境創出方法の検討)
  5. (5) 森林荒廃に関する勉強会の準備(情報収集、講師選定等の検討)

2.主たる活動計画(基礎調査の継続、増殖事業の啓発活動)

  1. (1) 天然アユ資源の生態、生息状況調査の継続実施
  2. (2) 産卵床造成と親アユ移植放流(子供たちの放流イベント計画)の実施
  3. (3) 秋葉ダム、船明ダム下流の河川環境改善作業の実施
  4. (4) 活動状況の周知(HPの活用継続)、他河川漁協、研究機関との連携
  • 秋葉ダム下流の河川環境改善対策に対しては、アユの良好な反応が確認された。ただし、経年劣化を窺わせる現象も見られるため、改善効果の耐用期間の把握が今後の課題と言える。また、この事業は、雲名橋上流の瀬を新たに対象としてはどうか?主要漁場の一つであり、ここでの改善が進めば、事業の認知度を高めることができる。(高橋委員)
  • 出水後の地形を見て、産卵床としてポテンシャルの高い湧水路を提案したい。(竹門委員)
  • 各委員は、2019年度の活動計画を立案して提案して頂きたい。(事務局)

IV.天竜川下流域樹林化対策事業が紹介された。

【配布資料】

  • 天竜川天然資源再生推進委員会平成30年度(年間スケジュール)
  • 天竜川天然資源再生推進委員会平成30年度活動結果(高橋委員、村上委員、竹門委員、有川委員、喜多村委員)
  • 2018年遡上群(2017年度級群)の流下~産卵:高橋委員資料
  • 秋葉ダム下流藻類調査(アユの摂食の場として、適切か?):村上委員資料
  • アユの餌は足りているか?-ダム河川・天竜川での鮎漁復活の試み:村上委員資料
  • 天竜川の砂州における湧流水路の形成過程と生息場機能:竹門委員資料
  • 秋葉ダム下流河道における河床環境改善の対策-平成30年度活動報告-:有川委員資料
  • 天竜川天然資源再生推進委員会の活動方針いついて(提案):事務局資料
  • 平成30年度 天竜川下流域樹林化対策事業 位置図:国土交通省浜松河川国道事務所資料

【出席者】

委員長 平野國行 天竜川漁協 代表理事組合長
副委員長 喜多村雄一 電源開発(株)茅ヶ崎研究所専任部長
委  員 高橋勇夫 たかはし河川生物調査事務所代表
村上哲生 中部大学応用生物学部環境生物科学科教授
竹門康弘 京都大学防災研究水資源環境研究センター准教授
有川 崇 近自然河川研究所
中谷 勲 天竜川漁協 理事・総務委員長
鈴木長之 天竜川漁協 理事・業務委員長
松下和明 天竜川漁協 理事・総務副委員長
野澤利治 天竜川漁協 理事・業務副委員長
津田英作 電源開発(株) 中部支店副支店長
中川京洋 電源開発(株) 佐久間電力所長代理
アドバイザー 福本晃久 国土交通省浜松河川国道事務所 調査課長
吉川昌之 静岡県経済産業部水産業局水産資源課 資源増殖班長
事務局局長 谷髙弘記 天竜川漁協 事務局長
事務局副局長 畠 誠二 電源開発(株) 中部支店用地グループリーダー
事務局員 服部芳明 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
高橋宏明 電源開発(株) 中部支店用地グループメンバー
記  録 小林英次 (株)JPビジネスサービス 環境・防災システムグループリーダー
オブザーバー 吉澤和明 電源開発(株) 佐久間電力所
高橋真司 京都大学防災研究水資源環境研究センター
学  生 京都大学防災研究水資源環境研究センター
足立京子 静岡淡水魚研究会