ハミ跡観察によるアユ分布調査2019年9月20日  今年6月のアユ解禁以降、悪天候やそれに伴う透視度不良などの川の状況により延期されていたアユの分布調査がようやく実施可能な状態になり、9月20日、今年第1回目の高橋勇夫農学博士によるアユのハミ跡観察が行われました。

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6月3日に続く2回目の「ハミ跡観察によるアユ分布調査」です。例年同様、下流の掛塚橋上流右岸から秋葉ダムまでの8ヶ所の河床のハミ跡を調査しました。「経験上、ハミ跡被度が40%以上であれば、友釣りで『まずまず釣れる場所』という判断ができるんです。」(高橋勇夫博士)
今回も目視による調査だけでなく、同じ場所で環境DNA調査のための採水も並行して行なわれました。この分析は、 河川水にどれほどのアユの生存の痕跡(排泄物など)が溶け込んでいるかをDNAレベルで調べるもので、これにより、より細かいアユの生存状況が把握できるのです。

1.掛塚橋上流右岸 ほぼ0%

現在、調査地点の上流部をせき止めて工事中のため調査定点付近はほとんど流量がなく、アユが生息できる環境でないと判断。観察を中止しました。

2.国道1号線橋下流左岸 ほぼ10%

今年の11月初旬に予定されている産卵床造成予定地。水量も豊富で、アユの好む流速も確保できるため、「産卵場を造るには適した条件が揃っている」(高橋勇夫博士)と判断されています。ところが、例年ならチラホラ見え始めるハミ跡が、今年は残念ながらほとんど確認されませんでした。

●透明度は1m程度と天竜川としては「普通レベル」まで回復していた。例年、安定してハミ跡が多く観察される地点であるが、今回はほとんど確認されなかった。●谷髙天竜川漁協事務長と二手に分かれ、それぞれ約50mおきに2ヶ所の計4ヶ所を横断してハミ跡の状況を観察する。●並行して水温や気温、環境DNA調査用のサンプル採水も行われた。●産卵床造成予定地前で解説をする高橋勇夫博士。今年は例年以上に環境負荷のかからない工法で行われる。(写真左上より右回りで)

3.寺谷左岸

昨年は10%程度のハミ跡が確認できた寺谷左岸。観察開始数分後、高橋博士、谷髙事務局長共々幸先よくハミ跡が確認できる礫を発見しました。(写真中央、赤い円の中)ところが、それ以降、ハミ跡を確認することがほとんどなく、全体としては1%未満とごく低い値でした。

●ハミ跡のある礫を見つけた高橋博士。●礫が濡れているため確認し辛いが、大きなハミ跡が4ヶ所確認できる。(写真中央上)●谷髙事務局長もハミ跡の残る礫を発見。(写真中央下)●観察記録を付ける高橋博士。(写真左上より右回りで)

4.飛竜大橋上流右岸

下流2地点よりもさらにハミ跡は少なく、「ほとんど無い」状態でした。水中では河床表面にカワシオグサ等の糸状緑藻が生育しており、アユがいる形跡はほとんどありませんでした。

●調査ポイントの打ち合わせをする高橋博士と谷髙事務局長。●赤丸内のハミ跡がアユのもの。下のエッジが丸い形状のハミ跡はボウズハゼのもの。●浅瀬でハミ跡を調査する谷髙事務局長。●流れが激しいため川面に白波が立つ本流域。横断の際、かなり身体が下流方向に流される。●浅瀬にあるボウズハゼのハミ跡群。●ハミ跡の状態を電源開発スタッフに解説する谷髙事務局長。(写真左上より右回りで)

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